おか》し。
 雑誌『太陽』の陽の字のつくり時に易《えき》に从《したが》ふものあり。そんな字は字引になし。[#地から2字上げ](二月二十七日)

『日本』へ寄せらるる俳句を見るに地方々々にて俳句の調にもその他の事にも多少の特色あり、従つて同地方の人は万事をかしきほどに似よりたる者あり。同一の俳句または最も善く似たる俳句が同地方の人二人の稿に殆ど同時に見出ださるる事などしばしばあれど、この場合にはいづれを原作としいづれを剽窃《ひょうせつ》とせんか、ほとほと定めかねて打ち捨つるを常とす。総じてその地方の俳句会|盛《さかん》なる時はその会員の句皆面白く俳句会衰ふる時はあるだけの会員|悉《ことごと》く下手になる事不思議なるほどなり。
 句風以外の特色をいはんか、鳥取の俳人は皆|四方太《しほうだ》流の書体|巧《たくみ》なるに反して、取手《とりで》(下総《しもうさ》)辺の俳人はきたなき読みにくき字を書けり。出雲《いずも》の人は無暗《むやみ》に多く作る癖ありて、京都の人の投書は四、五十句より多からず。大阪の人の用紙には大阪紙と称《とな》ふるきめ粗き紙多く、能代《のしろ》(羽後《うご》)の人は必ず馬鹿に
前へ 次へ
全196ページ中43ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング