あり。惜しいかな。[#地から2字上げ](二月二十六日)

 近来雑誌の表紙を模様|色摺《いろずり》となしかつ用紙を舶来紙となす事流行す。体裁上の一進歩となす。
 雑誌『目不酔草《めざましぐさ》』の表紙模様|不折《ふせつ》の意匠に成る。面白し。但《ただし》何にでも梅の花や桜の花をくつつけるは不折の癖と知るべし。
 雑誌『明星《みょうじょう》』は体裁の美麗《びれい》なる事普通雑誌中第一のものなりしが遂に廃刊せし由《よし》気の毒の至なり。今廃刊するほどならば最後の基本金募集の広告なからましかば、死際一層花を添へたらんかと思ふ。是非なし。
 雑誌『精神界』は仏教の雑誌なり。始に髑髏《どくろ》を画《えが》きてその上に精神界の三字を書す。その様何とやら物質的に開剖《かいぼう》的に心理を研究する意かと思はれて仏教らしき感起らず。髑髏の画《え》のやや精細なるにも因《よ》るならん。
 雑誌『みのむし』は伊賀より出づる俳諧の雑誌なり。表紙に芭蕪《ばしょう》の葉を画けるにその画|拙《つたな》くしてどうやら蕪《かぶら》の葉に似たるやう思はる。蕪村《ぶそん》流行のこの頃なれば芭蕉翁も蕪村化したるにやといと可笑《
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