じつ》を太陽暦に引き直せば西洋紀元千七百八十四年一月十六日金曜日に当るとぞ。即ち翌年の始に歿したる事となるなり。[#地から2字上げ](一月二十日)

 伊勢山田の商人《あきんど》勾玉《こうぎょく》より小包送りこしけるを開き見ればくさぐさの品をそろへて目録一枚添へたり。
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祈平癒呈《へいゆをいのりてていす》
御両宮之真境(古版)              二
御神楽之図《おかぐらのず》(地紙)               五
五十鈴《いすず》川口のはぜ(薬といふ丑《うし》の日に釣《つ》る)    六
高倉山のしだ                  一
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いたつきのいゆといふなる高倉の御山《みやま》のしだぞ箸《はし》としたまへ
  辛丑《かのとうし》のはじめ
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[#地から5字上げ]大内人匂玉
 まじめなる商人なるを思へば折にふれてのみやびもなかなかにゆかしくこそ。[#地から2字上げ](一月二十二日)

 病床苦痛に堪へずあがきつうめきつ身も世もあらぬ心地なり。傍《かたわ》らに二、三の人あり。その内の一人、人の耳ばかり見て居
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