川《なずかわ》の郷《さと》の、中を行く芳野の川の、川岸に幾許《ここら》所開《さける》は、誰《たが》栽《うえ》し梅にかあるらん、十一月《しもつき》の月の始を、早も咲有流《さきたる》
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 元義の歌

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  送大西景枝
真金《まがね》吹く吉備《きび》の海に、朝なぎに来依《きよ》る深海松《ふかみる》、夕なぎに来依る○みる、深みるのよせて来《こ》し君、○みるのよせて来し君、いかなれや国へかへらす、ちゝのみの父を思へか、いとこやの妹《いも》を思へか、剣《つるぎ》太刀《たち》腰に取佩《とりは》き、古《いにしえ》の本《ふみ》を手《た》にぎり、国へかへらす

  十二月五日御野郡の路上にて伊予の山を見てよめる歌并短歌
百足《ももた》らず伊予路を見れば、山の末島の崎々、真白にぞみ雪ふりたれ、並立《なみたち》の山のこと/″\、見渡《みわたし》の島のこと/″\、冬といへど雪だに見えぬ、山陽《かげとも》の吉備の御国は、住《すみ》よくありけり

  反歌
吹風ものどに吹なり冬といへど雪だにふらぬ吉備の国内《くぬち》は
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