しんし》にして古雅|毫《ごう》も後世|繊巧《せんこう》※[#「女+無」、第4水準2−5−80]媚《ぶび》の弊に染まず。今数首を抄して一斑を示さん。
 
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  天保八年三月十八日自彦崎至長尾村途中
うしかひの子らにくはせと天地《あめつち》の神の盛りおける麦飯《むぎいい》の山

  五月三日望逢崎
柞葉《ははそば》の母を念《おも》へば児島《こじま》の海|逢崎《おうさき》の磯|浪《なみ》立ちさわぐ

  五月九日過藤戸浦
あらたへの藤戸の浦に若和布《わかめ》売るおとひをとめは見れど飽かぬかも

  逢崎賞月
まそかゞみ清き月夜《つくよ》に児島の海逢崎山に梅の散る見ゆ

  望父峰
父の峰雪ふりつみて浜風の寒けく吹けば母をしぞ思ふ

  小田渡口
古《いにしえ》のますらたけをが渡りけん小田の渡りを吾《あれ》も渡りつ

  神崎博之宅小飲二首
こゝにして紅葉《もみじ》を見つゝ酒のめば昔の秋し思ほゆるかも
盃に散り来《こ》もみぢ葉みやびをの飲む盃に散り来もみぢ葉
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[#地から2字上げ](二月十六日)

 元義の歌
 
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  児島|
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