つた。落第もするはずさ、余は少しも歴史の講義聴きに往かぬ、聴きに往ても独逸《ドイツ》人の英語少しも分らぬ、おまけに余は歴史を少しも知らぬ、その上に試験にはノート以外の事が出たといふのだから落第せずには居られぬ。これぎり余は学校をやめてしまふた。これが試験のしじまひの落第のしじまひだ。
余は今でも時々学校の夢を見る。それがいつでも試験で困しめられる夢だ。[#地から2字上げ](六月十六日)
名古屋を境界線としてこれより以東以北の地は毎朝飯をたいて味噌汁をこしらへる。これより以西以南の地は朝は冷飯《ひやめし》に漬物で食ふ。これは気候寒暖の差から起つた事であらう。[#地から2字上げ](六月十七日)
東京中の鼠《ねずみ》を百万匹として毎日一万匹宛|捕《と》るとすれば百日にて全滅する理窟だ。しかし百日の内に子を産んで行くとすれば実際はいつなくなるか分らぬ。何にしろ一旦始めたのだから鼠の尽きるまでやつて見るが善いであらう。
頭の白い鼠や頭の黒い鼠もちと退治るが善い。[#地から2字上げ](六月十八日)
先頃の『葯房漫艸《やくぼうまんそう》』に美の事を論じて独りぎめになつては困るといふや
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