いで俳句と小説との勉強になつてしまふた。それで試験があると前二日位に準備にかかるのでその時は机の近辺にある俳書でも何でも尽《ことごと》く片付けてしまふ。さうして机の上には試験に必要なるノートばかり置いてある。そこへ静かに座をしめて見ると平生乱雑の上にも乱雑を重ねて居た机辺《きへん》が清潔になつて居るで、何となく心持が善い。心持が善くて浮き浮きすると思ふと何だか俳句がのこのこと浮んで来る。ノートを開いて一枚も読まぬ中《うち》に十七字が一句出来た。何に書かうもそこらには句帳も半紙も出してないからラムプの笠に書きつけた。また一句出来た。また一句。余り面白さに試験なんどの事は打ち捨ててしまふて、とうとうラムプの笠を書きふさげた。これが燈火十二ヶ月といふので何々十二ヶ月といふ事はこれから流行《はや》り出したのである。
かういふ有様で、試験だから俳句をやめて準備に取りかからうと思ふと、俳句が頻りに浮んで来るので、試験があるといつでも俳句が沢山に出来るといふ事になつた。これほど俳魔に魅入られたらもう助かりやうはない。明治二十五年の学年試験には落第した。リース先生の歴史で落第しただらうといふ推測であ
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