地から2字上げ](二月四日)
節分の夜に宝船の絵を敷寐して初夢をうらなふ事我郷里のみならず関西一般に同様なるべし。東京にては一月二日の夜に宝船を売りありくこそ心得ね。しかしこれも古き風俗と見え、『滑稽太平記《こっけいたいへいき》』といふ書《ふみ》に
[#ここから5字下げ]
回禄以後鹿相成家居に越年して
去年《こぞ》たちて家居もあらた丸太かな 卜養
宝の船も浮ぶ泉水 玄札
[#ここから2字下げ]
この宝の船は種々《くさぐさ》の宝を船に積たる処を画《え》に書《かき》回文《かいぶん》の歌を書添へ元日か二日の夜しき寐して悪《あ》しき夢は川へ流す呪事《まじないごと》なりとぞ、また年越《としこし》の夜も敷《しく》事《こと》ある故に冬季ともいひたり、しかるに二つある物は前の季に用る行年《ゆくとし》をとらんためなればこの理近かるべしといへるもあり、されども玄札老功たり既にする時は如何《いかん》とも春たるべしといふもありけり
[#ここで字下げ終わり]
と記せり。「元日か二日の夜」とあれば昔は二日の夜と限りたるにも非《あらざ》るか。[#地から2字上げ](二月五
前へ
次へ
全196ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング