すな。
閻王はせせら笑ひして
「よろしい、それでは突然とやるよ。しかし突然といふ中には今夜も含まれて居るといふ事は承知して居てもらひたい。
「閻魔《えんま》様。そんなにおどかしちやあ困りますよ。(この一句|菊五《きくご》調)
閻王からから笑ふて
「こいつなかなか我儘《わがまま》ツ子ぢやわい。(この一句|左団《さだん》調)
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拍子木《ひょうしぎ》 幕
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[#地から2字上げ](五月二十一日)
遠洋へ乗り出して鯨《くじら》の群を追ひ廻すのは壮快に感ぜられるが佃島《つくだじま》で白魚舟《しらうおぶね》が篝《かがり》焚《た》いて居る景色などは甚だ美しく感ぜられる。太公望《たいこうぼう》然として百本杭に鯉《こい》を釣つて居るのも面白いが小い子が破れた笊《ざる》を持つて蜆《しじみ》を掘つて居るのも面白い。しかし竹の先に輪をつけて臭い泥溝をつついてアカイコ(東京でボーフラ)を取つては金魚の餌《えさ》に売るといふ商売に至つては実に一点の風流気もない。それでも分類するとこれもやはり漁業といふ部に属するのださうな。[#地から2字上げ](五
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