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(略)元禄にもあらず天明にもあらず文化にもあらず固より天保《てんぽう》の俗調にもあらざる明治の特色は次第に現れ来るを見る(略)しかもこの特色は或る一部に起りて漸次《ぜんじ》に各地方に伝播《でんぱ》せんとする者この種の句を『新俳句』に求むるも多く得がたかるべし。『新俳句』は主として模倣時代の句を集めたるにはあらずやと思はる。(略)但《ただし》特色は日を逐《お》ふて多きを加ふ。昨集むる所の『新俳句』は刊行に際する今已にそのいくばくか幼稚なるを感ず。刊行し了へたる明日は果して如何に感ぜらるべき。云々
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といへり。果して『新俳句』刊行後『新俳句』を開いて見るごとに一年は一年より多くの幼稚と平凡と陳腐とを感ずるに至り今は『新俳句』中の佳什《かじゅう》を求むるに十の一だも得る能はず。是において新たに俳句集を編むの必要起る。しかれども『新俳句』中の俳句は今日の俳句の基礎をなせる者よろしく相参照すべきなり。
『新俳句』編纂《へんさん》より今日に至る僅かに三、四年に過ぎざれどもその間における我一個または一団体が俳句上の経歴は必ずしも一変再変に止まらず。しかも
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