替せざりしかば膿《うみ》したたかに流れ出て衣を汚せり。背より腰にかけての痛今日は強く、軽く拭《ぬぐ》はるるすら堪へがたくして絶えず「アイタ」を叫ぶ。はては泣く事例の如し。
浣腸《かんちょう》すれども通ぜず。これも昨日の分を怠りしため秘結《ひけつ》せしと見えたり。進退|谷《きわ》まりなさけなくなる。再び浣腸す。通じあり。痛けれどうれし。この二仕事にて一時間以上を費す。終る時三時。
著物《きもの》二枚とも著《き》かふ、下著《したぎ》はモンパ、上著は綿入。シヤツは代へず。
三島神社祭礼の費用取りに来る。一|匹《ぴき》やる。
繃帯かへ終りて後体も手も冷えて堪へがたし。俄《にわか》に燈炉《とうろ》をたき火鉢をよせ懐炉《かいろ》を入れなどす。
繃帯取替の間|始終《しじゅう》右に向き居りし故背のある処痛み出し最早右向を許さず。よつて仰臥《ぎょうが》のままにて牛乳一合、紅茶ほぼ同量、菓子パン数箇をくふ。家人マルメロのカン詰をあけたりとて一片《ひときれ》持ち来る。
豆腐屋|蓑笠《みのかさ》にて庭の木戸より入り来る。
午後四時半体温を験《けん》す、卅八度六分。しかも両手なほ冷《ひややか》、こ
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