り、月並調にあらずや。答、二句共に月並調に非ず、柳の句|俚語《りご》を用ゐたる故月並調らしく見ゆれど実際月並派にてはかく巧《たくみ》に、思ひきつて、得いはぬなり、桜の句も
[#ここから5字下げ]
銭金を湯水につかふ松の内
[#ここで字下げ終わり]
とでもなさば月並調となるべし、「桜かな」といふ五文字は月並派にては得《え》置かぬなり。[#地から2字上げ](五月十日)
根岸に移りてこのかた、殊《こと》に病の牀にうち臥してこのかた、年々春の暮より夏にかけてほととぎすといふ者の声しばしば聞きたり。しかるに今年はいかにしけん、夏も立ちけるにまだおとづれず。剥製《はくせい》のほととぎすに向ひて我思ふところを述ぶ。この剥製の鳥といふは何がしの君が自《みずか》ら鷹狩に行きて鷹に取らせたるを我ためにかく製して贈られたる者ぞ。
[#ここから2字下げ]
竜岡《たつおか》に家居る人はほとゝぎす聞きつといふに我は聞かぬに
ほとゝぎす今年は聞かずけだしくも窓のガラスの隔てつるかも
逆剥《さかはぎ》に剥ぎてつくれるほとゝぎす生けるが如し一声もがも
うつ抜きに抜きてつくれるほとゝぎす見ればいつくし声は鳴かねど
ほ
前へ
次へ
全196ページ中135ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング