すかも賤《しず》の男《お》さびて
常にくふかくのたちばなそれもあれどかしはのもちひ今日はゆかしも
みどり子《ご》のおいすゑいはふかしは餅われもくひけり病|癒《い》ゆがに
色深き葉広《はびろ》がしはの葉を広みもちひぞつゝむいにしへゆ今に
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[#地から2字上げ](五月七日)

 碧梧桐《へきごとう》いふ、
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手料理の大きなる皿や洗ひ鯉《ごい》
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の句には理窟めきたる言ひ廻しもなきに何故に月並調なるか。余いふ、月並調といふは理窟めきたる言ひ廻しをのみいふに非ず、この句手料理も大きなる皿も共に俗なり、全体俗にして一点の雅趣なき者もまた月並調とはいふ、もし洗ひ鯉に代ふるに初松魚《はつがつお》を以てせんか、いよいよ以て純粋の月並調となるべし。碧梧桐いふ、手料理といひ料理屋といふは常に我々の用ゐる所、何が故にこの語あれば月並調といふか。余いふ、そは月並派の仲間入でも為さば直に分る事なり、先づ月並の題に初松魚といふ題出でたりとせよ、この題を得たる八公《はちこう》熊公《くまこう》の徒はなかなか以て「朝比奈《あさひな》の曾我《そが》を訪
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