がらぬ人もたまにあるべけれど新華族になるほどの人華族を有難がらぬはなかるべし。宮内省と文部省との違ふためか、実利と虚名とのためか、学識なきと学識あるとのためか。[#地から2字上げ](五月六日)
五月五日にはかしは餅とて※[#「木+解」、第3水準1−86−22]《かしわ》の葉に餅を包みて祝ふ事いづこも同じさまなるべし。昔は膳夫《ぜんぷ》をかしはでと言ひ歌にも「旅にしあれば椎《しい》の葉に盛る」ともあれば食物を木の葉に盛りし事もありけんを、今の世に至りてなほ五日のかしは餅ばかりその名残《なごり》をとどめたるぞゆかしき。かしは餅の歌をつくる。
[#ここから2字下げ]
椎の葉にもりにし昔おもほえてかしはのもちひ見ればなつかし
白妙《しろたえ》のもちひを包むかしは葉の香をなつかしみくへど飽かぬかも
いにしへゆ今につたへてあやめふく今日のもちひをかしは葉に巻く
うま人もけふのもちひを白がねのうつはに盛らずかしは葉に巻く
ことほぎて贈る五日のかしはもち食ふもくはずも君がまに/\
かしは葉の若葉の色をなつかしみこゝだくひけり腹ふくるゝに
九重《ここのえ》の大宮人《おおみやびと》もかしはもち今日はを
前へ
次へ
全196ページ中131ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング