ガラス戸の曇りて見えぬ山吹の花
ガラス戸のくもり拭へばあきらかに寐ながら見ゆる山吹の花
春雨のけならべ降れば葉がくれに黄色乏しき山吹の花
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粗笨《そほん》鹵莽《ろもう》、出たらめ、むちやくちや、いかなる評も謹《つつし》んで受けん。われはただ歌のやすやすと口に乗りくるがうれしくて。[#地から2字上げ](四月三十日)
病牀で絵の写生の稽古《けいこ》するには、モデルにする者はそこらにある小い器か、さうでなければいけ花か盆栽の花か位で外に仕方がない。その範囲内で花や草を画いて喜んで居ると、ある時|不折《ふせつ》の話に、一つの草や二つ三つの花などを画いて絵にするには実物より大きい位に画かなくては引き立たぬ、といふ事を聞いて嬉しくてたまらなかつた。俳句を作る者は殊に味ふべき教である。[#地から2字上げ](五月一日)
『宝船』第一巻第二号の召波《しょうは》句集|小解《しょうかい》を読みて心づきし事一つ二つ
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紙子《かみこ》きて嫁が手利《てきき》をほゝゑみぬ
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「老情がよく現はれてゐる」との評なれど余はこの句は月並調に近き者
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