#ここから5字下げ]
鶯や婿《むこ》に来にける子の一間《ひとま》      太祇《たいぎ》
[#ここで字下げ終わり]
は月並調に非ずやと。挿雲《そううん》いふ、
[#ここから5字下げ]
初午《はつうま》はおのれが遊ぶ子守かな     挿雲
[#ここで字下げ終わり]
の句は月並調に陥り居らずやと。以上の句人のも自分のも余は月並調に非ずと思ふ。余が月並調と思へる句は左の如き句なり。
[#ここから5字下げ]
二日灸《ふつかきゅう》和尚|固《もと》より灸の得手      碧梧桐
草餅や子を世話になる人のもと    挿雲
手料理の大きなる皿や洗ひ鯉     失名
[#ここで字下げ終わり]
など月並調に近きやう覚ゆ。古人の句にても
[#ここから5字下げ]
七草や余所《よそ》の聞えも余り下手     太祇
七草や腕の利《き》きたる博奕打《ばくちうち》      同
帰り来る夫のむせぶ蚊遣《かやり》かな     同
[#ここで字下げ終わり]
など月並調なり。芭蕉《ばしょう》の
[#ここから5字下げ]
春もやゝけしきとゝのふ月と梅    芭蕪
[#ここで字下げ終わり]
なども時代の上よりいへば月並調の一
前へ 次へ
全196ページ中118ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング