折角御教|被下《くだされ》候事ながら小生には難施《ほどこしがたき》事と御承知|可被下《くださるべく》候。ただ小生唯一の療養法は「うまい物を喰ふ」に有之候。この「うまい物」といふは小生多年の経験と一時の情況とに因《よ》りて定まる者にて他人の容喙《ようかい》を許さず候。珍しき者は何にてもうまけれど刺身は毎日くふてもうまく候。くだもの、菓子、茶など不消化にてもうまく候。朝飯は喰はず昼飯はうまく候。夕飯は熱が低ければうまく、熱が高くても大概《たいがい》喰ひ申候。容態|荒増《あらまし》如此《かくのごとくに》候。[#地から2字上げ](四月二十日)
前日記したる御籤《みくじ》の文句につき或人より『三世相』の中にある「元三大師《がんざんだいし》御鬮《みくじ》鈔《しょう》」の解なりとて全文を写して送られたり。その中に佳人水上行《かじんすいじょうにゆく》を解して
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かじんすいじやうにゆくとはうつくしき女の水の上をあゆむがごとくわがなすほどのことはあやふく心もとなしとのたとへなり
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とあり。不見月波澄《げっぱすむをみず》を解して
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きり
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