薬も施すの余地|無之《これなく》神様の御力もあるいは難及《およびがたき》かと存居《ぞんじおり》候。小生今日の容態は非常に複雑にして小生自身すら往々誤解|致居《いたしおる》次第故とても傍人には説明|難致《いたしがたく》候へども、先づ病気の種類が三種か四種か有之、発熱は毎日、立つ事も坐る事も出来ぬは勿論、この頃では頭を少し擡《もた》ぐる事も困難に相成《あいなり》、また疼痛《とうつう》のため寐返り自由ならず蒲団の上に釘付にせられたる有様に有之候。疼痛|烈《はげ》しき時は右に向きても痛く左に向きても痛く仰向になりても痛く、まるで阿鼻叫喚《あびきょうかん》の地獄もかくやと思はるるばかりの事に候。かつ容態には変化極めて多く、今日明日を計らず今朝今夕を計らずといふ有様にて、この頃は引続いてよろしいと申すやうな事は無之、それ故人に容態を尋ねられたる時答辞に窮し申候。「この頃は善い方です」とは普通に人に答ふる挨拶なれども何の意味もなき語に有之候。一時的容態はかく変化多けれども一年の容態をいへば昨年は一昨年よりも悪く、今年は昨年よりも悪き事歴々として事実に現れ居候。かくの如き次第故薬も灸もその他の療養法も
前へ
次へ
全196ページ中112ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング