杉や花の上野の後側
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 把栗《はりつ》鼠骨《そこつ》が一昨年我病を慰めたる牡丹《ぼたん》去年《こぞ》は咲かずて
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三年目に蕾《つぼみ》たのもし牡丹の芽
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 窓前の大鳥籠には中に木を栽《う》ゑて枝々に藁《わら》の巣を掛く
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追込の鳥早く寐る日永かな
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 毎日の発熱毎日の蜜柑《みかん》この頃の蜜柑はやや腐りたるが旨《うま》き
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春深く腐りし蜜柑好みけり
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 隣医|瓢《ひさご》を花活《はないけ》に造り椿《つばき》を活けて贈り来る滑稽の人なり
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ひねくり者ありふくべ屋椿とぞ呼べる
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 焚《た》かねば邪魔になる煖炉《だんろ》取除《とりの》けさせたる次の朝の寒さ
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煖炉取りて六畳の間の広さかな
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 歯の痛三処に起りて柔かき物さへ噛みがてにする昨今
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筍《たけのこ》に虫歯痛みて暮の春
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 或人|苔《こけ》
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