かし男ばかりの詩会などは特別であつて、普通には女子供の遊びときまつて居る。半日運動して、しかも清らかな空気を吸ふのであるから、年中家に籠《こも》つて居る女にはどれだけ愉快であるか分らぬ。固よりその場所は町の外で、大方半里ばかりの距離の処で、そこら往来の人などには見えぬ処である。歌舞伎座などへ往て悪い空気を吸ふて喜んで居る都の人は夢にも知らぬ事であらう。[#地から2字上げ](四月十日)

 虚子《きょし》曰《いわく》、今まで久しく写生の話も聞くし、配合といふ事も耳にせぬではなかつたが、この頃話を聴いてゐる内に始めて配合といふ事に気が附いて、写生の味を解したやうに思はれる。規《き》曰、僕は何年か茶漬を廃してゐるので茶漬に香の物といふ配合を忘れてゐた。[#地から2字上げ](四月十一日)

 我試みに「文士保護未来夢」といふ四枚続きの画をかいて見ようか。
 第一枚は、青年文士が真青な顔して首うなだれて合掌《がっしょう》して坐つて居る。その後には肩に羽のある神様が天《あめ》の瓊矛《ぬぼこ》とでもいひさうな剣を提《さ》げて立つて居る。神様は次の如く宣告する。汝《なんじ》可憐なる意気地なき、心臓の鼓
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