]※[#「門<壬」、47−8]」に白丸傍点]の壬《じん》を王に誤るが多し。
傘[#「傘」に白丸傍点]は人冠に人四箇に十なり。しかるに十字の上にも中にも横の棒を引く事古きよりの習ひと見えたり。
吉[#「吉」に白丸傍点]の士《さむらい》を土に誤り書く者多し。
舍[#「舍」に白丸傍点]は人冠に舌なり。されど人冠に土に口を書きし字も古き法帖《ほうじょう》に見ゆ。
臼[#「臼」に白丸傍点]の下の処は一を引くなり。兒[#「兒」に白丸傍点]も同じ。されどこの一の棒の中を切りて二画に書くは書きやすきためにや。
鼠[#「鼠」に白丸傍点](ねずみ)の上の処は臼《うす》なり。しかるにこの頃|※[#「獵のつくり」、第4水準2−8−77]《ろう》の字を書く人あり。後者は※[#「虫+鑞のつくり」、第3水準1−91−71]獵臘などの字の旁《つくり》にて「ろふ」「れふ」の音なり。
易[#「易」に白丸傍点]は日に勿なり。賜[#「賜」に白丸傍点]の字。※[#「りっしんべん+易」、第3水準1−84−53][#「※[#「りっしんべん+易」、第3水準1−84−53]」に白丸傍点]の字など皆同じ。されど陽揚腸場楊湯[#「陽揚腸場楊湯」に白丸傍点]など陽韻《よういん》に属する字の旁は易《えき》の字の真中に横の棒を加へたるなり。
※[#「懶−りっしんべん」、第3水準1−92−26]獺※[#「さんずい+懶のつくり」、第3水準1−87−30]懶[#「※[#「懶−りっしんべん」、第3水準1−92−26]獺※[#「さんずい+懶のつくり」、第3水準1−87−30]懶」に白丸傍点]などの旁は負なり頁《おおがい》に非ず。
「ちり」は塵[#「塵」に白丸傍点]なり。しかるに艸冠《くさかんむり》をつけて※[#「くさかんむり/塵」、第4水準2−87−4]の字を書く人あり。後者は艸名《そうめい》(よもぎの訓あり)ならん、「ちり」の字にはあらず。こは塵《ちり》の草体《そうたい》が艸冠の如く見ゆるより誤りしか。
解[#「解」に白丸傍点]は角《つの》に刀に牛なり。牛の字を井《せい》に誤るが多し。
漢字廃止論のあるこの頃かかる些少《さしょう》の誤謬《ごびゅう》を正すなど愚の至《いたり》なりと笑ふ人もあるべし。されど一日なりとも漢字を用ゐる上は誤なからんを期するは当然の事なり。いはんや国文に漢字を廃するも漢字は永久に滅びざるをや。但かかる事は数十年慣れ来りし誤を一朝に改めんとすれば非常に困難を覚ゆれど初め教へらるる時に正しき字を教へこまるれば何の困難もなき事なり。小学校の先生たちなるべく正しき字を教へたまへ。[#地から2字上げ](三月四日)
誤りやすき字左に
段鍛[#「段鍛」に白丸傍点]は「たん」にして假蝦鰕霞遐は「か」なり。段と※[#「蝦−虫」、第4水準2−3−64]《か》と扁《へん》もつくりも異なるを混同して書く人多し。
蒹葭[#「蒹葭」に白丸傍点]は「あし」「よし」の類なるべし。葭簀張《よしずばり》の葭も同字なり。しかるに近頃葮[#「葮」に白三角傍点]の字を用ゐる人あり。後者は字引に「むくげ」とあるはたしかならねど「よし」にあらざるは勿論なり。
「おき」は沖[#「沖」に白丸傍点]なり。しかるにこの頃は二水《にすい》の冲[#「冲」に白三角傍点]の字を用ゐる人多し。両字とも水深の意なきにあらねど我邦《わがくに》にて「おき」の意に用ゐるは字義より来るに非ずしてむしろ水[#「水」に白丸傍点]の真中[#「中」に白丸傍点]といふ字の組立より来るに非《あらざ》るか。
汽[#「汽」に白三角傍点]車の汽を※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6][#「※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]」に白三角傍点]と書く人多し。字引に汽は水气《すいき》也とあるを福沢翁の見つけ出して訳字に当てたるなりと。※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]の字もあれど意義異なり。
四[#「四」に白丸傍点]の字の中は片仮名のルの字の如く右へ曲ぐるなり。讀贖[#「讀贖」に白丸傍点]などのつくりの中の処も四を書くなり。されど賣[#「賣」に白丸傍点]の字の中の処は四の字に非ず。右へ曲ぐる事なく真直に引くなり。いささかの事故どうでもよけれどただ讀(とく)のつくりが賣(ばい)の字に非ることを知るべし。
奇[#「奇」に白丸傍点]の字の上の処は大の字なり。奇の字を字引で引かんとならば大の部を見ざるべからず。されど立の字の如く書くも古き代《よ》よりの事なるべし。
逢蓬峯[#「逢蓬峯」に白丸傍点]は「ほう」にして降絳[#「降絳」に白丸傍点]は「こう」なり。終りの処少し違へり。
※[#「女+※[#「臣」の「コ」に代えて「口」、第4水準2−85−54]」、49−15][#「※[#「女+※[#「臣」の「コ」に代えて
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