天皇の大御使《おおみつかい》と聞くからにはるかにをがむ膝をり伏せて
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勅使をさえかしこがりて匍匐《はらば》いおろがむ彼をして、一たび二重橋下に鳳輦《ほうれん》を拝するを得せしめざりしは返すがえすも遺憾《いかん》のことなり。
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都にのぼりて
大行《たいこう》天皇の御はふりの御わざはてにけるまたの日、泉涌寺《せんにゅうじ》に詣《もうで》たりけるに、きのふの御わざのなごりなべて仏さまに物したまへる御ありさまにうち見奉られけるを畏《かしこ》けれどうれはしく思ひまつりて
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ゆゆしくも仏の道にひき入るる大御車《おおみくるま》のうしや世の中
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曙覧は王政維新の名を聞きて、その実を見るに及ばざりしなり。
[#地付き]〔『日本』明治三十二年三月二十四日〕
社会の一貧民としての曙覧、日本国民の一人としての曙覧は、臆測ながらにほぼこれを尽せり。ここより歌人としての曙覧につきて少しく評するところあらんとす。
曙覧の歌は比較的に何集の歌に最も似たりやと問わば、我れも人も一斉に『万葉』に似たりと答えん。彼が『古今
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