雲の峰
一日の旅おもしろや萩の原
白露や原一ぱいの星月夜
茸狩や友呼ぶこゑも秋の風
おのが荷に追はれて淋し芒賣

【琴平】
木の緑したゝる奧の宮居哉
水鳥や蘆うら枯れて夕日影
澁※[#「※」は「木へん+「弟」から一、二、三画目を取ったもの」、第3水準1−85−57、16−11]や行來のしげき道の端
※[#「※」は「木へん+「弟」から一、二、三画目を取ったもの」、第3水準1−85−57、16−12]の實やうれしさうにもなく烏
澁※[#「※」は「木へん+「弟」から一、二、三画目を取ったもの」、第3水準1−85−57、16−13]のとり殘されてあはれ也

【内藤先生等と言志會を結びし時】
澁※[#「※」は「木へん+「弟」から一、二、三画目を取ったもの」、第3水準1−85−57、16−15]もまじりてともに盆の中

【鬼女腕を奪ひ去る圖に】
凩に舞ひあがりたる落葉哉
雪の跡さては酒屋か豆腐屋か

【傾城戀飛脚〔三句〕
  芒尾花はなけれとも世を忍ふ身の】
招く手はなけれど淋し枯薄

【こゝらあたりに見なれぬ女中】
いぶかしや賤が伏家の冬牡丹

【ものいはず顏見ずと手さきへなとさはつたら】
闇の夜は鼻で探るや梅の花

【袋井】
冬枯の中に家居や村一つ

【垂井】
雪のある山も見えけり上り阪

【京都】
祗園清水冬枯もなし東山
[#改頁]

明治二十三年(紀元二千五百五十年)

元日や一輪開く福壽艸
盆栽に梅の花あり冬こもり
白雪をつんで小舟の流れけり
胡蝶飛び風吹き胡蝶又來る
蝶ふたつ風にもつれて水の上
蝶飛ぶや山は霞に遠くなる
櫻から人にうつるや山の風
若草や草履の裏に塵もなし
垣ごしに丁子の花の匂ひかな
一枝の花おもさうや酒の醉
傘に落つる櫻の雫かな
朧とは櫻の中の柳かな
人黒し朧月夜の花あかり
月落ちて鴉鳴く也花明り
牛飼も牛も眠るや桃の花 ノ句 繋がれて牛も眠るやもゝの花
[#「ノ句 繋がれて牛も眠るやもゝの花」は「牛飼も牛も眠るや桃の花」の下にポイントを下げて2行で]
あたゝかな雨がふるなり枯葎
春の月一重の雲にかくれけり
夕月や簾に動く花の影
家根舟の提灯多し朧月

【向嶋】
土手三里花をはなれぬ月夜哉
菜の花やはつとあかるき町はつれ
家の上に雲雀鳴きけり町はづれ
半日は空にあそぶや舞雲雀
みなし子のひとりで遊ぶ雛哉
駒の尾に春の風吹く牧場哉
落したか落ちたか路の
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