を床の間にうや/\しく飾りて】
簔笠を蓬莱にして草の庵
小松曳袴の泥も畫にかゝん
【義農神社】
初※[#「※」は「奚+隹」、第3水準1−93−66、45−2]も知るや義農の米の恩
元朝や皆見覺えの紋處
【乞食】
元朝や米くれさうな家はどこ
若水や瓶の底なる去年の水
烏帽子着て幣ふる猿や花の春
遣羽子をつき/\よける車哉
一羽來て屋根にもなくや初烏
蓬莱の山を崩すや嫁が君
蓬莱の松にさしけり初日の出
年玉に上の字を書く試筆哉
うつかりと元日の朝の長寢哉
元日と知らぬ鼾の高さかな
君が春箒に掃ふ塵もなし
袴着て火ともす庵や花の春
烏帽子着る世ともならばや花の春
[#改頁]
春 時候 人事
涅槃會や蚯蚓ちきれし鍬の先
かゝり凧奴は骨となつてけり
鶯の目を細うする餘寒かな
虻の影障子にうなる日永かな
鶯の根岸はなるゝ日永かな
【追善】
鳴さして鶯むせふ餘寒哉
【織女《アヤハトリ》圖】
さゝかにの糸ひきのはす日永哉
行く春や大根の花も菜の花も
やす/\と青葉になりて夏近
行春や柳の糸も地について
涅槃會や何見て歸る子供達
烏帽子きた殿居姿の朧なり
【画賛】
面※[#「※」は「白+はち」、第3水準1−14−51、48−4]の聲朧也春の陣
朧夜はお齒黒どぶの匂ひ哉
菎蒻ののびさうになる日永哉
長閑さや障子の穴に海見えて
猿曳も猿も見とれて傀儡師
人の世の工夫ではなし削り掛
ひよ/\と遠矢のゆるむ日永哉
うたゝねを針にさゝれる日永哉
永き日や菜種つたひの七曲り
駒鳥鳴くや唐人町の春の暮
死はいやぞ其きさらぎの二日灸
つく鐘を唖の見て居る彼岸哉
涅槃像胡蝶の梦もなかりけり
名をつけて鴇母にするや崩れ雛
此頃やまだのどかさもあそここゝ
此頃の夜の朧さや白き花
出代やまだ初戀のきのふけふ
水尾谷がしころちぎれし雛かな
ある時はすねて落ちけり凧
涅槃會の一夜は闇もなかりけり
涅槃像寫眞なき世こそたふとけれ
白き山青き山皆おぼろなり
出代りの英語をつかふ別れ哉
朧夜にくづれかゝるや浪かしら
のどかさや松にすわりし眞帆片帆
氣の輕き拍子也けり茶摘歌
春 天文
うぐひすの茶の木くゝるや春の雨
生壁に花ふきつける春の風
競吟 春風や井戸へはひりしつはくらめ[#「競吟」は上部に出ている]
春雨やよその燕のぬれてくる
馬子哥の鈴鹿上るや春の雨
青柳にふりけされけり春の雪
【神田大火
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