つくそ哀也)」は「石女の鬼燈ちぎる哀れ也」の下にポイントを下げて2行で、カッコはその2行を括る形で]

【氷川公園万松樓】
ぬれて戻る犬の背にもこぼれ萩
一句なかるべからずさりとてはこの萩の原
何の思ひ内にあればや蕃椒
まいた餌に※[#「※」は「奚+隹」、第3水準1−93−66、40−3]もどる菊畠
武藏野に月あり芒八百里
夕日さす紅葉の中に小村哉
痩村と思ひの外の紅葉哉

【十月廿四日平塚より子安に至る道に日暮て】
稻の香や闇に一すぢ野の小道

【翌廿五日大山に上りて】
野菊折る手元に低し伊豆の嶋
一枝は荷にさしはさむ菊の花
隣からそれて落ちけり桐一葉
落葉かく子に茸の名を尋けり
順禮の木にかけて行く落穗哉
[#改頁]

明治廿四年 冬

鐘つきはさびしがらせたあとさびし

【人之性善】
濁り井の氷に泥はなかりけり
木枯や木はみな落ちて壁の骨
小烏の鳶なぶりゐる小春哉

【(はせを忌)】
頭巾きて老とよばれん初しくれ
三日月を相手にあるく枯野哉
秋ちらほら野菊にのこる枯野哉
冬かれや田舍娘のうつくしき
夕日負ふ六部背高き枯野哉
埋火や隣の咄聞てゐる
雲助の睾丸黒き榾火哉
小春日や淺間の煙ゆれ上る
木枯やあら緒くひこむ菅の笠
順禮の笠を霰のはしりかな

【松山百穴】
神の代はかくやありけん冬籠
笹の葉のみだれ具合や雪模樣
しばらくは笹も動かず雪模樣
[#「笹の葉の」と「しばらくは」の句の上には、この二つの句を括る波括弧あり]

冬 動物

水鳥の四五羽は出たり枯尾花
枯あしの折れこむ舟や石たゝき
鴨ねるや舟に折れこむ枯尾花
[#「枯あしの」と「鴨ねるや」の句の上には、この二つの句を括る波括弧あり]
千鳥なく灘は百里の吹雪哉
水鳥のすこしひろがる日なみ哉
枯あしの雪をこほすやをしのはね
鷹狩や陣笠白き人五人
耳つくや下より上へさす夕日
賈島痩せ孟郊寒し雪の梅
枯あしや名もなき川の面白き
馬の尾に折られ/\て枯尾花

【田舍】
わらんべの酒買ひに行く落葉哉
順禮一人風の落葉に追はれけり
笘の霜夜の間にちりし紅葉哉
[#改頁]

明治廿五年
(廿五年)新年

【御題 旭出山】
不盡赤し筑波を見れは初日の出

【元日戀 課題】
初日の出隣のむすめお白粉未だつけず
死ぬものと誰も思はず花の春
御降の氷の上にたまりけり

【簔一枚笠一個簔は房州の雨にそほち笠は川越の風にされたる
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