めて面白けれども斯る想は今古に通じたる想なれば實朝が之を作りたりとて驚くにも足らず只世の中はの歌の如く古意古調なる者が萬葉以後に於てしかも華麗を競ふたる新古今時代に於て作られたる技量には驚かざるを得ざる譯にて實朝の造詣の深き今更申すも愚かに御座候。大海の歌實朝のはじめたる句法にや候はん。
新古今に移りて二三首を擧げんに
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なこの海の霞のまよりなかむれは入日を洗ふ沖つ白波 (實定)
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此歌の如く客觀的に景色を善く寫したる者は新古今以前にはあらざるべくこれらも此集の特色として見るべき者に候。惜むらくは「霞のまより」といふ句が疵《きず》にて候。一面にたなびきたる霞に間といふも可笑しく、縱《よ》し間ありともそれは此趣向に必要ならず候。入日も海も霞みながらに見ゆるこそ趣は候なれ。
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ほの/\と有明の月の月影は紅葉吹きおろす山おろしの風 (信明)
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これも客觀的の歌にてけしきも淋しく艶なるに語を疊みかけて調子取りたる處いとめづらかに覺え候。
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さひしさに堪へたる人のまたもあれな庵
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