束を固めて逸早く本部へ駈けつけて行った。そこから勢ぞろいして火元の湯屋へ繰り出したのだが、その夜は乾いた北西が吹いていて、どうにもならなかった。で、比較的大きくなって明方に及んだ。
 ところが、さわぎはこれだけではなかった。というわけは、湯屋の焼跡から二つの焼屍体が発見されたのだった。一つは湯屋の娘おとめちゃんで、他の一つは茂助だった。だから、こうして茂助を殉職消防夫として死後表彰することになったのである。
 怪火だった。火の気のあるべきはずのない物置から発火したとあって、放火だろうと警察が活躍していた。おとめちゃんの死んだのは逃げおくれたからで、これは気の毒だがまず致方《いたしかた》ないとしても、茂助は、事実世評のごとくおとめちゃんを助けに這入って死んだものなら、恋仲だろうが何だろうが消防夫として火事で死んだ以上は、町としてうっちゃってはおけない――よろしく町葬にすべし、表彰すべしというので在《ざい》から茂助の伯父伯母を呼んで、ちょうど火事から三日後の今日が、そこでこの茂助の町葬の日なのである。
 午後三時、町の有志をはじめ消防夫一同が役場のまえに集って、行列をつくって智行寺《ちぎょ
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