活動にはいる。
ジャワなどとは嘘の皮で、一八七六年八月七日、オランダの Leenwarder 町に生まれた。家はささやかな書籍商。父は Adam Zell、母親の名は Autje van der Maclen といった。「|朝の眼《マタ・アリ》」も夜の眼もない。本名は Marguerite Zelle。インド内地の神殿というが、じつは首府へイグ市近郊の宗教学校、尼さんになるつもりでここで教育を受けた。が、早くも少女時代に飛び出して結婚している。もちろん、相手は貴族でもなんでもない。強《し》いていえば、兵営の貴族だった。オランダに遊びに来ていた若い英国士官マクリイの軍服は、後年の「|朝の眼《マタ・アリ》」には、十分貴族的に見えたかもしれない。一緒になるとすぐ、マクリイはインド駐屯《ちゅうとん》軍付きを命じられた。のちのマタ・アリことマルガリット・ツェルもくっついて行く。
だから、インドへ行ったことは行ったのだ。が、南国に住むと、特質が強調されて、潜《ひそ》んでいた個性が現われるといわれている。青年将校マクリイがそれだった。人が変わったように、飲む。買う。打つ。手に負えない。おまけに
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