戦雲を駆る女怪
牧逸馬
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)露独《ろどく》連絡の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)赤|瓦《かわら》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]《そう》話
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1
露独《ろどく》連絡の国際列車は、ポーランドの原野を突っ切って、一路ベルリンを指して急ぎつつある。
一九一一年の初夏のことで、ロシアの国境を後にあの辺へさしかかると、車窓の両側に広大な緑色の絨毯《じゅうたん》が展開される。風は草木の香を吹き込んで快《こころよ》い。一等の車室《ワゴンリ》を借りきってモスコーからパリーへ急行しつつある若いロシア人ルオフ・メリコフは、その植物のにおいに鼻孔《びこう》を擽《くすぐ》られながら、窓の外に眼をやると、そこには、いままでの荒涼たる景色のかわりに、手入れのゆきとどいた耕地がある。白揚《はくよう》の並木と赤|瓦《かわら》の農
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