》人がここの海岸へ城塁を築きました。それを、あとから和蘭《オランダ》の征服者が改造しました。そしておらんだ人は、いま市場区《ペタア》のあるところを自分たちの住宅街ときめて、市内湖に浮かぶ「奴隷の島」で、土民を飼い慣らしました。が、いぎりす旦那《マスター》が見えるようになってから、治世は一変しました。英吉利旦那は、和蘭の城邑《パアジャア》さんなんかとはすっかり肌あいが違って、ものやさしいことが好きで、不思議にも、奴隷牧畜がきらいでした。で、堡砦《フォート》は土へ還って、そのあとに、停車場と郵便局と病院と大学と教会と、リプトン製茶会社とYMCA会館とが、植物のように生え出しました。市場区《ペタア》はいま、あらゆる東洋的な土器と石器と竹器と、平和と柔順と汗臭《かんしゅう》との楽しい交歓場《よろこびのにわ》でしかありませんし、むかしの「奴隷島」では、馬来《マライ》人の家族とあふがん族の家庭が、椰子《やし》の葉で葺《ふ》いた庇《ひさし》の下で、ぼろぼろのお米を噛《か》みしめて、一晩じゅう発達した性技巧を弄《ろう》して、そのお米の数ほども多い子供を産んで、つまり、一口には、皆がみな、いぎりす旦那《
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