ヤトラカン・サミ博士の椅子
牧逸馬
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)珈琲《コーヒー》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)小冊子的|煽情《せんじょう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)じゃあまん[#「じゃあまん」に傍点]
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マカラム街の珈琲《コーヒー》店キャフェ・バンダラウェラは、雨期の赤土のような土耳古《トルコ》珈琲のほかに、ジャマイカ産の生薑《しょうが》水をも売っていた。それには、タミル族の女給の唾《つば》と、適度の蠅《はえ》の卵とが浮かんでいた。タミル人は、この錫蘭《セイロン》島の奥地からマドラスの北部へかけて、彼らの熱愛する古式な長袖着《キャフタン》と、真鍮《しんちゅう》製の水甕《みずがめ》と、金いろの腕輪とを大事にして、まるで瘤牛《ジイプ》のように山野に群棲《ぐんせい》していた。それは「古代からそのままに残された人種」の一つの代表といってよかった。彼らは、エルカラとコラヴァとカスワとイルラの四つの姓閥《ケイスト》からできあがっていた。そして、そのどれもが、何よりも祖先と女
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