の子を尊重した。祖先は、タミル族に、じつは彼らが、あの栄誉ある古王国ドラヴィデアの分流であることを示してくれるのに役立ったから、彼らはその祭日を忘れずに、かならずマハウェリ・ガンガの河へ出かけて行って、めいめいの象といっしょに水掃礼を受けた。が、女の子を歓迎したのは、そういう民族的に根拠のある感情からではなかった。女は、彼らにとって、家畜の一種としての財産だったからだ。女の子が生まれると、彼らはそれを、風や雑草の悪霊《あくりょう》から保護して育てて、大きくなるのを待ってコロンボの町へ売りに出た。この、タミル族の若い女どもを買い取るのは、おもにそこの旅客街のキャフェだった。女給にするのだ。ことに、ポダウィヤの酋長《しゅうちょう》後嗣選挙区にある、ポダウィヤ盆地産の女は値がよかった。なぜといえば、イギリス旦那《マスター》の「文明履物《かわぐつ》」のようなチョコレート色の皮膚と、象牙《ぞうげ》の眼と、蝋引《ろうび》きの歯、護謨《ごむ》細工のように柔軟《やわらか》な弾力に富む彼女らの yoni とは、すでに英吉利旦那《イギリスマスター》の市場においても定評がなかったか?
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