う駄目だ――。」
「なにが駄目だ。」
「もうチャア公は見つかりっこない――おれも死ぬ間際だ。嘘は言わねえ。誘拐《ゆうかい》して、伴《つ》れて逃げ廻っているうちに、チャア公のやつ、すっかりモスタアに馴付《なつ》いちまって、モスタアの野郎もまた、柄になく、チャア公を自分の子供みてえに、大事に可愛がっていましたが、そのうちに、自分ひとりのものにしようてんで、私からも隠してしまった。私も癪《しゃく》にさわったが、だいたいこれはモスタアの思いついた仕事だし、仕方がないから胸をさすっていました。こういうわけで、このごろのチャアリイのいどころを知っているのは、モスタアだけなんでさ。いまそのモスタアに死なれてみると――もう駄目だ。親元には気の毒だが、もうチャアリイは見つかりっこ[#「見つかりっこ」は底本では「見つかりこっ」]ねえ――。」

 ニューヨークから急行した二人の顔を見知っているウォウリング警部は、一|瞥《べつ》してこの二個の死体をモスタアとダグラスと確認した。もう駄目だ。事件は、事件として綺麗《きれい》に解決したのだ。

 が、チャアリイはどこにいる?
 モスタアの頭部を粉砕したあの運命的な
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