した。
「皆さん、懺悔《ざんげ》させて下さい。私は、チャアリイ・ロスを誘拐《ゆうかい》して世を騒がせたジョウ・ダグラスという者です。相棒と二人でやったんです。あの相棒、ビル・モスタアという――どこかそこらに倒れてるでしょう? あいつ、ひどくやられてますか。」
この重大な告白に驚いた立会いの警官は、呼吸のあるうちにと急いで訊問をはじめた。
「なんでもいい。チャアリイはどこにいる? 早くそれを言え。」
「ヴァンダビルト家の息子と思って盗んだんでさ――。」
「盗んでどうした? いまどこにいる?」
「チャア公かね。俺あ知らねえ。」
「なに、知らない? 嘘を言え。」
「ほんとに知らねえ。チャア公の居場所なら、モスタアの野郎が知ってる。」
そのモスタアはすでに死んでる。愕然とした一同は、いっそうダグラスを囲んで詰め寄った。モスタアが即死したと聞いて、瀕死《ひんし》のダグラスも、肘《ひじ》を立てて身を起そうとした。人々はダグラスの疑いを霽《は》らすために、モスタアの屍《し》骸を引きずって来てみせなければならなかった。するとがっくり[#「がっくり」に傍点]となりながら、ダグラスが言った。
「も
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