かい》者の手紙が、間断なく配達されていた。身代《みのしろ》金は、五万ドルにまで競《せ》りあがっていた。もう一日の猶予《ゆうよ》もならない。即座に金額を払わなければ、チャアリイの眼を硫酸で焼いてしまうといってきた。
こうして、ロス氏夫妻の苦悩と全米の騒ぎが頂天に達した時である。ふと[#「ふと」に傍点]したことからあれほど頑強だったモスタアとダグラスの二人が明るみへ引き出されて、事件は、急転直下的に、ともかく表面は解決を告げたのだった。
チャアリイが誘拐《ゆうかい》されてから五ヵ月あまり経過した。十二月十四日の深夜、ベイ・リッジというところにあるヴァン・ブラント氏の家へ押し込もうとしていた二人組の強盗が、物音を聞いて起き出た同家の執事《バトラア》によって発見された。まだはいらないで、窓ガラスを切ろうとしている現場だった。幸いこの家は男手が多かった。主人のヴァン・ブラント氏と息子と、それに運転手や料理人や召使たちが、手に手に短銃を擬して強盗に立ち向った。巡査が駈《か》けつけたのも、珍らしく早かった。強盗は勇敢な抵抗を開始した。広大な芝生の庭で拳銃戦がはじまった。家の者は窓へ倚《よ》って発
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