はっ[#「はっ」に傍点]として眼が覚めました。けれど、いかにもありあり[#「ありあり」に傍点]とした夢で、葦《あし》の葉が風に揺《ゆ》れていたのさえ覚えています――あら! どうなさいまして?」
夫人が仰天《ぎょうてん》したのも無理はない。ウォウリング警部は、みなまで聞かずに、帽子を握り締めて突っ起《た》っていた。
3
「奥さん!」探偵長はひどく昂奮して、白い顔だった。「不思議なことがあるものですねえ。まったく、気味が悪いほど不思議なことがあるものです。その夢は、いま私どもの持っている確信をいっそう裏づけるばかりです。じつは、誘拐《ゆうかい》者の名は、もう私どものほうにはわかっているのです。モスタアにダグラスという、有名な|河の海賊《リヴア・パイレイト》ではないかと、いや、じゅうぶん信ずるにたる確証が挙《あが》っているのですが、いまのお話で決定したようなものです。必ずチャアリイは、あなたの夢のとおりに、このモスタアとダグラスのボウトに乗せられて、どこかあまり遠くない、葦の生《は》えている川のあたりを漂っているのでしょう。もう大丈夫、こっちのものです。御安心下さい。」
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