》する、これよりはなはだしきものはない。われわれの眼の碧《あお》いうちは断じて――。」
西洋人だから眼の黒いうちと言うところを碧いうちとやった。とにかく敦圉《いきま》いた。
実際そのとおりである。
ロス氏は、チャアリイの身柄に傷をつけずに受取りさえすればそれでよい。そのためには金なんかいくらでもだすつもりである。が、警察としては、もちろん子供も子供だが、こうなるとなによりも犯人を捕まえたい。ここに、ロス氏側と警察と二者の目的の間に、避けられない開きが生じた。そして、いわばこの事件の性質上、当然の|開き《ギャップ》こそは、じつにこの事件を取り返しのつかないことに導いてしまった真の原因である。とこういうと、ある人は嗤《わら》うだろう。けっして捕《つか》まえないという警察の保証をつけて犯人を誘《おび》き出し、その、のこのこ現われたところを子供と一緒に押えちまえばいいじゃないか、と。これはだれしも第一に考えるところで、そううまくゆけば簡単な解決である。まことに世話がない。ロス氏も警察も、この囮《おとり》手段には先刻気がついているんだが、そんな尋常《じんじょう》な手段に乗る相手ではないのだ
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