。ことに先方が職業的に誘拐《ゆうかい》者であってみれば、そんな作戦は百も承知していて、いかに巧妙に網を伏せたところで、間違ってもそいつに引っかかるようなだらし[#「だらし」に傍点]のないことはしない。彼らはじつに、山一つむこうの水を嗅《か》ぐ鹿のように、その筋の動きと自分の危険にたいしては、つねに異常に敏感にこれを察知し、それによって抜け目なく行動するのだから。
 ところが、たいした期待もおかず出した新聞広告にあんがいさっそく反響があった。三日に掲載されて、四日のことである。誘拐《ゆうかい》者から最初の手紙がロス邸へ郵便で配達された。なかなか面白いからまず原文を掲げる。
[#ここから2字下げ]
Mr.Ross ―― Be not uneasy. Your son Charlie will be all write. We as got him, and no power on earth can deliver him out of our hands. You will have to pay us before you git him from us, and pay a big 
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