んでろう――阿部!」
話にわくわくしていた塚原が、半畳《はんじょう》を入れた阿部にがなりつけた。彼はとびだして行くが早いか、その小さな子供をつき倒した。
「頭でっかち、すっこんでろ!」そう大喝して、くるっと川上に向きなおりはげしく促した。「そいで……そいで、それからどうした?」
ところが倒された阿部はむっくり起きなおって、じろじろ教室じゅうを見わたした。彼は後の方の机にちょこんと腰を下している杉本を発見した。阿部はぽんと跳ねあがり盲《めくら》めっぽうの迅《はや》さで杉本の頭に抱きついた。
「先生、先生ッ! 大変だ、柏原が、うんこを洩らしちゃった、うんこ――」
杉本がようやく腰をあげると、阿部は拍子をとって床を踏みならし、節おもしろく叫ぶのであった。
「あ、うんこだ、うんこだ、柏原うんこだ」
みんな一度にがたがた立ちあがった時、塚原義夫が川上忠一を殴りつけていた。
「やい、手前嘘を吐《つ》け! あたいのおっ母はおっ潰されたんだぞ、やい!」
「杉本さん、あんまりだらしがなさすぎますぜ、尋常四年生じゃねえんですか、そりゃ掃除をしろと命令されりゃあ掃除もしましょう、しかし何しろ――」
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