………………だなって、こうだ」川上はさっと一太刀浴せかける恰好を見せた。「そいからこんなでっかい針金でもってね、………………………………………………、……………………………………………………」しかし、その時の手ぶりは途中でわなわなふるえだし彼は蒼ざめて自分から溜息をついてしまった。「ああ、おっかねえ――」
「手前、見てたのか?」と塚原がせきこんだ。
「見てたとも――」川上はそう答えて、はずむ呼吸を抑え、傲然《ごうぜん》といい放った。「あたいはそん時三つだったんだ!」
「そ、そいから? そいからどうした?」
「そいからお前、大河に………………………………」
「死んだんだなあ――」がっくり首を落しいま一人の子が痛々しそうに呟いた。川上忠一はそれには見向きもせず、今はその話に自分から夢中になってきた。
「手前も……だろう――って言われた時にゃあ、あたいも肝《きも》っ玉がふっとんじゃったぞ。活動写真たあまるっきり違うんだからな」
 窓側の一番前にいるさい槌頭[#「さい槌頭」に傍点]の阿部が、その時がたがた立ちあがり、当てずっぽうに杉本を呼ぶのであった。
「先生え? 先生!」
「うるせえ、すっこ
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