が一斗五升にも八升にも斗《はか》りかえられた。それだのに、何の因果でか、ある日から忽然《こつぜん》と、米屋という米屋はキログラムを使わねばならなくなった。「この腕がお前――」と彼はとうとう嘆きだした。「使い道がねえじゃねえか。なあ義――」と、こんどはきょろきょろしている伜に向い「お前も可哀そうな餓鬼だよ、震災じゃあ、おっ母がおっ潰されっちまうしよ。しかし何だぞ、眼鏡なんてしゃら臭くって掛けられるもんじゃねえからな」
紙芝居の拍子木がカチカチひびきわたって、ろじ裏から子供たちがぞろぞろ集まってきたが、一銭玉一つも持っていない子供はそこでも除け者にされるのであった。長屋の中は暗くじめじめしていた。それに較べると学校はひろく勝手気ままに跳びはねることができるのだ。放課後になると、これは子供より何よりも、校舎を汚されることだけが自分の馘《くび》と同じくらい怖ろしいと観念している使丁たちに階下の遊び場を追いまくられ、子供らは吹きっさらしの屋上運動場に逃げあがって行った。そこでは、家に帰ってもつまんねえ――と指をくわえる子供らが、犬ころのようにたわいなくふざけちらしていた。「先生、あたいも遊んで
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