併し猟夫になるにはコッペ先生は余りに獣類を愛し過ぎた。先生はその邸内に色々な獣類を飼つて置くので、まるで動物園のやうだつた。而して先生は一々それを僕達に紹介した。第一番が詩人の愛犬トリッフである。この犬は、「ジユールナール」紙に連載された。コッペの愛情の溢るる計りの詩の本尊で、その写真迄も新聞に掲げられて広く名の知られた犬である。次ぎはベラといふ名の牝山羊。而して其の次ぎがプチー。ルールーでこれはアンネット嬢さんのお気に入りの猫である。
僕達が漸く其の広々した庭園を(処々秋の木の葉の散つてゐる)――眺め始めた時に……十二時が鳴つて、昼飯の食卓に就く時刻が来た。啻《ただ》さへ秋は僕達の食慾をそそるのに、況《ま》して沢山な御馳走で……我々は遠慮なく腹一ぱいに頂戴した。コッペ先生の食慾は僕達程ではないので、シガレットを吹かしながら何かと雑談……
僕は今日始めて詩人の話振りを聞いて、ものを書くコッペと、話をするコッペとがひどく懸け離れてゐる事に気が付いた。書く方のコッペは感傷的なアイロニーと少し儀式張つた熱の高い抒情詩的であるが、話す方のコッペは、極めて開けつ放しで、愉快で気軽で、少しの遠
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