フランソア・コッペ訪問記
堀口九萬一

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)苺園《フレジエール》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)『|王冠の為め《プール・ラ・クーロンヌ》』

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)稍※[#二の字点、1−2−22]
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 僕が詩人フランソア・コッペをマンドルの田舎に訪問したのは、十月の晴々した日であつた。僕は以前からこの別荘の名は知ってゐたし。また誰が尋ねて行つても歓迎されると云ふことも、聞いてゐた。新聞記者などがコッペの閑居『苺園《フレジエール》』の事を語る時にはいつも愉快さうな調子で話してゐたので。
 ……そこで僕達は出発した。僕達といふのは学友のシャルル・ブノワが同行したからである。ブノワはコッペの縁戚で且つ今日の往訪は予ねて先生に打合せ済みだつた。午前十時にヴァンセンヌの停車場から出発した。遠方の田舎へでも旅行するやうな意気込みで出掛けたのだつた。而して実の処マンドルは巴里近郊――日曜日には女優や女
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