て、次三男出生の数は多く、需要供給その平均を得ずして、つねに父兄の家に養われ、ついには二世にして姪《おい》の保護を蒙《こうむ》りて死する者少なからず。これを家の厄介《やっかい》と称す。俗にいわゆる※[#「月+濂のつくり」、第4水準2−85−50]噛《すねかじり》なる者なり。すでに一家の厄介たり、誰れかこれを尊敬する者あらんや。いかなる才力あるも、※[#「月+濂のつくり」、第4水準2−85−50]噛はすなわち※[#「月+濂のつくり」、第4水準2−85−50]噛にして、ほとんど人に歯《よわい》せられず。
世禄の武家にしてかくの如くなれば、その風《ふう》はおのずから他種族にも波及し、士農工商、ともに家を重んじて、権力はもっぱら長男に帰し、長少の序も紊《みだ》れざるが如くに見えしものが、近年にいたりてはいわゆる腕前の世となり、才力さえあれば立身出世勝手次第にして、長兄愚にして貧なれば、阿弟《あてい》の智にして富貴なる者に軽侮せられざるをえず。ただに兄のみならず、前年の養子が朝野に立身して、花柳《かりゅう》の美なる者を得れば、たちまち養家|糟糠《そうこう》の細君を厭《いと》い、養父母に談じて自
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