、先ず以て人情世界に行われ難き所望にして、本《もと》はと言えば古来流行の女子教育法に制せられ、遂に社会全般の習慣を成して、舅姑も嫁も共に苦労することなれば、斯く無理なる所望して失敗するよりも、行われざる事は行われずとして他に好手段を求め、人情の根本より割出して家の幸福を全うせんこと我輩の望む所なり。
一 文字の如く舅姑は舅姑にして嫁は嫁なり。元来親に非ず子に非ざれば、其親子に非ざる真実の真面目に従て和合の法を講ずるこそ人情の本来なれ。我輩の特に注意する所のものなり。之を近づくれば固より相引き之を遠ざけても益《ますます》相引かんとするは夫婦の間なれども、之を近づくれば常に相|衝《つ》き之を遠ざくれば却て相引かんとするは舅姑と嫁との間なり。故に女子結婚の上は夫婦共に父母を離れて別に新家を設くるこそ至当なれども、結婚の法一様ならず、家の貧富、職業の事情も同じからざれば、結婚必ず別門戸は行われ難しとするも、せめて新夫婦が竈《かまど》を別にする丈けは我輩の飽くまでも主張する所なり。例えば家の相続男子に嫁を貰うか、又は娘に相続の養子する場合にも、新旧両夫婦は一家に同居せずして、其一組は近隣なり又は
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