人は自《みず》から従事する所の業務に忠実ならざる可らず。其大小軽重に論なく、苟《いやしく》も責任を怠るものは、独立自尊の人に非ざるなり。
第十七条 人に交《まじわ》るには信を以てす可し。己《おの》れ人を信じて人も亦己れを信ず。人々《にんにん》相信じて始めて自他の独立自尊を実《じつ》にするを得べし。
第十八条 礼儀作法は、敬愛の意を表する人間交際上の要具なれば、苟《かりそ》めにも之を忽《ゆるがせ》にす可らず。只《ただ》その過不及《かふきゅう》なきを要するのみ。
第十九条 己れを愛するの情を拡《おしひろ》めて他人に及ぼし、其疾苦を軽減し其福利を増進するに勉むるは、博愛の行為にして、人間の美徳なり。
第二十条 博愛の情は、同類の人間に対するに止まる可らず。禽獣を虐待し又は無益の殺生《せっしょう》を為《な》すが如き、人の戒む可き所なり。
第二十一条 文芸の嗜《たしなみ》は、人の品性を高くし精神を娯《たのし》ましめ、之を大にすれば、社会の平和を助け人生の幸福を増すものなれば、亦|是《こ》れ人間要務の一なりと知る可し。
第二十二条 国あれば必ず政府あり。政府は政令を行ひ、軍備を設け、一国の男女を
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