れども、ここにはただ事実の例を示さんがために、その稀に有る者の数を比較したるのみ。)
 かつ限《かぎり》ある士族の内にて互に縁組《えんぐみ》することなれば、縁に縁を重ねて、二、三百年以来今日に至《いたり》ては、士族はただ同藩の好《よしみ》あるのみならず、現に骨肉の親族にして、その好情の篤《あつ》きはもとより論を俟《ま》たず。然《しか》るに今日、試《こころみ》に士族の系図を開《ひらき》てこれを見れば、古来上下の両等が父祖を共にしたる者なし、祖先の口碑《こうひ》を共にしたる者なし。恰《あたか》も一藩中に人種の異《こと》なる者というも可《か》なり。故にこの両等は藩を同《おなじゅ》うし君を共にするの交誼《こうぎ》ありて骨肉の親情なき者なり。(骨肉の縁を異にす)
 第三、上等士族の内にも家禄にはもとより大なる差ありて、大臣《たいしん》は千石、二千石、なおこれより以上なる者もあり。上等の最下《さいか》、小姓組、医師のごときは、十人扶持《じゅうにんぶち》より少なき者もあれども、これを概《がい》するに百石二百石或は二百五十石と唱《とな》えて、正味《しょうみ》二十二、三石より四十石|乃至《ないし》五、六
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