うがく》するを許さざりしこともあり。
 これ等《ら》の件々は逐一《ちくいち》計《かぞ》うるに暇《いとま》あらず。到底《とうてい》上下両等の士族は各《おのおの》その等類の内に些少《さしょう》の分別《ぶんべつ》ありといえども、動かすべからざるものに非ず。独《ひと》り上等と下等との大分界《だいぶんかい》に至《いたり》ては、ほとんど人為《じんい》のものとは思われず、天然の定則のごとくにして、これを怪《あや》しむ者あることなし。(権利を異にす)
 第二、上等士族を給人《きゅうにん》と称し、下等士族を徒士《かち》または小役人《こやくにん》といい、給人以上と徒士以下とは何等《なんら》の事情あるも縁組《えんぐみ》したることなし。この縁組は藩法においても風俗においても共に許さざるところなり。啻《ただ》に表向の縁組のみならず、古来士族中にて和姦《わかん》の醜聞《しゅうぶん》ありし者を尋《たずぬ》るに、上下の士族|各《おのおの》その等類中に限り、各等の男女が互に通じたる者ははなはだ稀《まれ》なり。(ただし日本士族の風俗は最も美にして、和姦などの沙汰は極めて稀《まれ》に聞くところなり。中津藩士ももとより同様な
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