ば百余級の多きに至れども、これを大別《たいべつ》して二等に分つべし。すなわち上等は儒者、医師、小姓組《こしょうぐみ》より大臣《たいしん》に至り、下等は祐筆《ゆうひつ》、中小姓《なかごしょう》[#ここから割り注]旧厩格[#ここで割り注終わり]供小姓《ともごしょう》、小役人《こやくにん》格より足軽《あしがる》、帯刀《たいとう》の者に至り、その数の割合、上等は凡《およ》そ下等の三分一なり。
 上等の内にて大臣と小姓組とを比較し、下等の内にて祐筆《ゆうひつ》と足軽とを比較すれば、その身分の相違もとより大なれども、明《あきらか》に上下両等の間に分界を画《かく》すべき事実あり。すなわちその事実とは、
 第一、下等士族は何等《なんら》の功績《こうせき》あるも何等の才力を抱《いだ》くも、決して上等の席に昇進《しょうしん》するを許さず。稀《まれ》に祐筆などより立身して小姓組に入《いり》たる例もなきに非ざれども、治世《ちせい》二百五十年の間、三、五名に過ぎず。故に下等士族は、その下等中の黜陟《ちゅっちょく》に心を関して昇進を求《もとむ》れども、上等に入るの念は、もとよりこれを断絶して、その趣《おもむき》は
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