を設立するにも、真に旧藩地一般のためにするの事実明白にして、何等の陋眼《ろうがん》をもってこれを視《み》るも、上士を先《さき》にするというべからず、下士を後《のち》にするというべからず、その目的とするところは正《まさ》しく中津旧藩の格式りきみを制し、これを制了して共《とも》に与《とも》に日本社会の虚威《きょい》を圧倒せんとするもののごとくにして、藩士のこの学校に帰《き》すると否《いな》とはその自然に任《まか》したりしに、士族の上下に別なく漸《ようや》く学に就《つ》く者多く、なかんずく上等士族の有力なる人物にて、その子弟を学校に入るる者も少なからず。
すでに学校に心を帰《き》すれば、門閥《もんばつ》の念も同時に断絶してその痕跡《こんせき》を見るべからず。市学校は、あたかも門閥の念慮《ねんりょ》を測量《そくりょう》する試験器というも可《か》なり。(余輩《よはい》もとより市学校に入らざる者を見て悉皆《しっかい》これを門閥守旧の人というに非ず。近来は市校の他に学校も多ければ、子弟のために適当の場所を選ぶは全く父母の心に存することにして、これがため、敢《あえ》てその人物を軽重《けいちょう》する
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